課長の独占欲が強すぎです。
「いえ、別にひとりでも平気ですから。課長は皆と行って下さいってば」
私の説得などに貸す耳持たず、宍尾さんは自分のスマホを取り出すと「天丼・蕎麦セットと冷やしたぬき」などといつものように3人前の量を蕎麦屋に注文しだした。
な、なんでこんな事になったんだろうと私は半ば混乱しながらランチバッグを持って応接スペースのソファーに座る。
私が一人だと寂しいだろうと思って気遣ってくれてるのだろうか。気持ちは嬉しいけど……宍尾さんとふたりきりで食事の方が、なんだか気が休まらない。
そんな事を思いつつバッグからお弁当箱を取り出したとき、大きな身体が向かいのソファーに沈みこみそうな勢いで座った。
……うわあ、と心の中で小さく叫びそのまま動きが止まってしまう。すると、正面から強すぎる眼力の視線が痛いほどこちらに降り注いだ。
「どうした、気にせず先に食ってろ。お前は食べるのが遅いんだから昼休みが終わってしまうだろうが」
「は、はい……」
そんなに見られてたら食べ難い事このうえ無いのに、こっちの気も知らず宍尾さんはドンと腕組をして観察するように私を眺めている。
今日の昼食は消化に悪そうだと思いつつ、私はおずおずとお弁当箱の蓋を開けた。