課長の独占欲が強すぎです。

「なんか……違うかも」

 東さんは見た目は悪くない。宍尾さんみたいに端整な顔つきではないけど、愛想のいいのも相まって人並み以上のルックスだとは思う。清潔感だってあるし、身長も体重もセンスも問題ない。

 そして、裏表が無くて親切なのも知っている。

 ……けれど。あの人の腕に抱かれるのは、何か違うと思った。例えキスをされても愛を囁かれても、私はきっと東さんを“いい人”以上には思えない。

「東主任のこと嫌いじゃないけど、男の人として見れるかと言ったら別かも」

「そっか、残念だね。でも答えはハッキリ出たね」

「うん」

 せっかくのチャンスだけど、自分にウソついて傷つけ合うような恋はしたくない。それが上司として慕っている東さんだからこそ余計に。

「東さんには明日、お断りしてくる」

 映画の試写会はちょっと残念だけど、なんて現金な事を思った自分に苦笑して、私は甘酸っぱい林檎酒を喉へと流し込んだ。

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