課長の独占欲が強すぎです。

***

 翌日。相変わらず部署はバタバタと忙しく、社員の出入りも激しい。今日は宍尾課長が朝から得意先に出かけ、東主任も午後から外へと行ってしまった。

 出来れば東さんには今日中に返事がしたいんだけどなあ、と考えながら壁の時計を見上げる。

 断るにしても、ラインや電話ではなく直接言葉で伝えたい。私のことを真剣だと言ってくれた人に対するせめてもの誠意だと思うから。

 けれど、終業時間になっても東さんは帰って来ず、私はひとり、ふたりと減っていくフロアで受発注の再確認と連休明けにやろうと思っていたデータの整理をしながら東さんを待った。


「まだ居たのか橘」

 気がつくとフロアには他に誰も居なくなっていて、得意先から帰ってきた宍尾さんが私に声を掛けてきた。

「あ……すみません、もうすぐ帰りますから」

 東さんのデスクには通勤用の鞄が置いてある。だから直帰せずに1度社に戻って来ると思って待っていたんだけど、時間はもう19時になろうとしていた。

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