課長の独占欲が強すぎです。
「え……映画を観に行こうと昨夜誘われて……」
さすがに告白の返事をするために待ってるとは言えず、とりあえずプライベートな話だと訴えて引いてもらおうと考えた私は甘かった。
ダンッ!!! と、フロアの壁を突き破る勢いで、宍尾さんが私の頭の横に両手を着いた。
ビックリしたなんてもんじゃない。いよいよヒグマが私を仕留めに襲い掛かったのかと思った。汗がブワッと吹き出し、足がブルブルと震える。
こんなおっそろしい壁ドンがあっていいのだろうか。心臓はドキドキしているけれど、これは命の危機を感じての不整脈だ。
思わず涙目になりながら、近すぎてほぼ真上にある宍尾さんの顔を見上げると、影の落ちている精悍な顔が忌々しげに歪められて呟いた。
「駄目に決まってるだろうが。何を考えてる、馬鹿が」
「な、な、な、なんでですか!?」
恐怖がピークを通り越しメーターを振り切ってしまったせいで、私は混乱とやけくそで宍尾さんに喰って掛かる。
「ど、どうしてさっきからやたらと干渉するんですか!? 私がどこで誰と何をしようと勝手じゃないですか!」