課長の独占欲が強すぎです。
次の瞬間。私は世界が、いや、自分の心臓が停止したと思った。
「————っ……!!?」
2メートルの体躯が屈み、腕の中に閉じ込められた私の唇が奪われた。
驚いて見開く目には宍尾さんのアップの顔。力強い瞳は閉じられていて、長くて涼やかな睫毛が目元を綴っているのが見える。
ただただ驚いてしまい、突き飛ばす事も逃げる事も出来ない。硬直した身体で爆発しそうな心臓が治まるのを願うように待った。
優しく唇を重ね合わせ、わずかに食むような甘い動きを見せてから、宍尾さんは顔を離した。そして瞠目したままの私に向かって眉をしかめる。
「勝手じゃない。俺が先にデートに誘ったんだから、お前は俺のものだ」
宍尾さんに会ってから私は何度も驚かされたし意味が分からないと首を傾げた事もあったけど、それらを遥かに凌駕する驚愕と困惑が今私を襲っている。
私が宍尾さんのものになった理由も、勝手にキスされた理由も、さっぱり分からない。