課長の独占欲が強すぎです。
「なっ!? 何やってるんですか!?」
私たちの尋常じゃない様子を見た東さんが、驚きを露にして駆け寄ってくる。
とんでもないところを見られてしまったと云う焦りもあったけど、とにかく今の状況をなんとかしたくて、私は宍尾さんが気を取られてる隙に腕の間から逃げ出そうした。ところが。
翻した身体を力強い腕がガッシリと拘束……いや、抱きしめてきた。
「逃げるな。まだ話は終わってない」
「ひぃー!!」
「ちょ、課長! なんて事してるんですか!!」
むりやり胸板に押し付けられ身体が窮屈に痛む。「イタイ、イタイ!」ともがいたら僅かではあるけれど腕の力が弛められた。それにしてもなんて筋肉質。胸も腕も硬いったらありゃしない。
「課長、橘さんを離して下さい」
私たちの前に対峙した東さんが表情を引き締めて、真剣な声色で言った。もしかしたら東さんは泣いてる私を見て、宍尾さんが酷い事をしたと勘違いしてるのかも知れない。
……いや、勘違いではないか。いきなりキスされたんだし。
けど、宍尾課長と東主任。ふたりが本気で敵対する事態にはなって欲しくない。