課長の独占欲が強すぎです。

「東主任、私は大丈夫ですから」

 そう言い掛けた時、私を抱きしめている頭上から重力さえ感じる低い声が放たれた。

「東。お前、俺の女を映画に誘ったのか」

 俺の女!? またしてもとんでもない事を、しかも東さんに向かって言い出した宍尾さんの言葉に頭までクラクラしてくる。

「……ええ、誘いました。けど、橘さんは誰のものでも無いはずです」

 返す東さんの言葉も、冷静だけど怒気を含んでいる。むしろ、ふだん朗らかな彼がこんな声色で喋る事がかなり驚きだ。

 そして次に、それ以上の怒気を孕んだ声が宍尾さんから発せられ、思わず身体を竦ませてしまった。

「なら教えといてやろう。橘は俺のものになった。分かったら2度と馬鹿な事はするな」

 なんたる独占欲。勝手に自分のものと主張した挙句、周囲を排除するなんて。もしこれが宍尾さんじゃなかったら、私は相手の頬を引っ叩いてしまってたかもしれない。
 
 けれどこの体格差、しかも抱きしめられてる状態でそんな事が出来る筈も無く。
 
 それに、どうにもこうにもこの威圧的な声で言われ、おまけに強い眼で見据えられてしまうと、歯向かう気力も萎んでしまう。
 
 
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