課長の独占欲が強すぎです。

 それでも、さすが空気を読む達人東さん。どう見ても仲睦まじい恋人には見えない状況を悟って今度は私の方に尋ねてきた。

「橘さん、本当?」

 その言葉を聞いて振り向くと、宍尾さんの手が緩んで私を解放する。見上げると『お前が答えろ』と聞こえてきそうな視線が私を見ていた。

「わ、私は……宍尾さんのことは——」

 これはチャンスだ。ハッキリ言うべきだ。強引に振り回さないで欲しいって。私は別に宍尾さんのものじゃ無いって。

 だって——宍尾さんなんて、おっかないし、ぶっきらぼうが過ぎるし、強引すぎるし、喋る声が低くて怒ってるみたいだし、前に立たれるとオーラだけで潰されちゃいそうだし。それに、私の扱い乱暴だし、腕掴まれると痛いし——

 ——でも……キスは優しかった。

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