課長の独占欲が強すぎです。
ふいに、私の頭に杏子ちゃんの言葉が過る。
『恋愛対象と思えるかを判断するには、その人とキスする自分を思い浮かべてみればいいのよ』
……凄くビックリしたけど、強引で腹が立ったけど、困惑したけど……私、宍尾さんにキスされた時イヤだったのかな。
宍尾さんが咄嗟に腕を掴むときは力の加減が出来なくて、いつも痛いほど強く掴むけど、でも私が痛そうな顔をするとすぐに優しいものに変わる。
桜並木の下をおんぶしてくれた時みたいに。壊れそうな物を扱うみたいに。
「…………私……宍尾課長の事はおっかないけど、嫌いでもないです」
漠然とした答えだと自分でも思ったけど、気持ちがまだあやふやだから仕方ない。けれど、宍尾さんはあやふやが好きではないようで。
「なんだそれは、ハッキリしろ」
きっぱりと強い口調で返されてしまった。
「だから!……私は宍尾課長のものじゃないです。おっかないのも強引過ぎるのも苦手です。でも……優しくしてくれる時は、少し好きかも知れません」