課長の独占欲が強すぎです。

 文句なく広い肩幅に逞しい背中。無駄な肉などまったくこれっぽっちも無くて、引き締まったウエストは腹筋が割れてそうだ。そして知ってはいたけども脚が長い。股下が私のヘソの位置にあるってどう云う事だろう。

「何を見てるんだ」

 ついボーっと見入ってしまい、声を掛けられて我に返る。恥ずかしくなって慌てて車に乗り込もうとしたら、なんと宍尾さんが助手席側にまわってドアを開けてくれた。

「どうも……」

 思わぬ紳士的な振る舞いに驚きつつ助手席に座れば、中はかなりゆったりとした空間だった。

 広いなあと思ったけれど、運転席に乗り込んだ宍尾さんを見て理解する。彼の大きな身体を収納させるにはこれぐらいの広さが必要なのだと。長すぎる脚も色々大変なのだな。

 そうして車は駅を出発し、順調に高速へ向かって進んでいった。

 それにしても……ふたりっきりの車内、何も喋らないわけにはいかず当たり障りのない天気の話題や仕事関係の話題を振る。

 けれど、私が「宍尾課長は——」と口にした時、眼光鋭い瞳に横目で睨まれた。

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