課長の独占欲が強すぎです。

 勢い良く入れられては困るので、林檎を差し出してくる大きな手を自分の両手で抑えるようにキュッと掴む。

 私は和泉さんとは違って林檎をひと口で食べるほどの大きな口は持ってないので、端にカプッと齧りつき少しずつ食べ進めた。

 こんな食べさせられ方をしてるけど、林檎は瑞々しくて美味しいなと思いながら一生懸命食べ進めていると、こちらをジッと見ていた彼とふと目が合ってしまう。
 
 うわ、なんか恥ずかしい、と私の中の羞恥心が一層強くなる。すると和泉さんは眉を顰めてなんだか難しそうな顔をした。

「兎かお前は」

 そんな表情でそんな科白を言われて、私は密かにショックを受ける。なんだろう、自分では気付かなかったけど私って食べる姿がげっ歯類っぽいのだろうか。かなりショックだ。

 そんな風に思われてはもう林檎に齧りついてる姿など見せられないので、私はピックから食べかけの林檎を抜き取ると、そのまま手で持って俯いて食べる事にした。伏せた視界には入らなかったけど、和泉さんの溜息をつく音が聞こえた。

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