ほろ苦キャラメルマキアート ~コーヒーの香りに誘われて~
「...よくそんな甘いもん飲めるな」
「このキャラメルマキアートは少し苦いけどね」
「俺が作ったのに文句あるのか?」
「ううん。これはこれでスキ」
そう言ってキャラメルマキアートを飲み干す。
彼は甘いものが嫌いだ。
そしてコーヒーが好き。
私が彼について知っていることはこれだけだ。
年齢なんて知らない。名前さえ知らない。
彼女がいるかどうかなんてもちろん知らない。
この人くらいの年齢なら結婚しててもおかしくないのかな...。
考えれば考えるほどモヤモヤしてくる。
聞けば教えてくれるかもしれないけど......
彼からすれば「ただの客」な私がそんなこと聞いてもいいのかな。
私にとっては彼は特別だけど、彼にとっての私は「毎日来る変な客」くらいにしか思われていないだろう。
それでもいい。
私は彼が好きなんだから。
この気持ちに嘘はつきたくない。
でも、この気持ちは私だけの秘密。