ほろ苦キャラメルマキアート ~コーヒーの香りに誘われて~


「...よくそんな甘いもん飲めるな」


「このキャラメルマキアートは少し苦いけどね」


「俺が作ったのに文句あるのか?」


「ううん。これはこれでスキ」


そう言ってキャラメルマキアートを飲み干す。


彼は甘いものが嫌いだ。


そしてコーヒーが好き。


私が彼について知っていることはこれだけだ。


年齢なんて知らない。名前さえ知らない。


彼女がいるかどうかなんてもちろん知らない。


この人くらいの年齢なら結婚しててもおかしくないのかな...。


考えれば考えるほどモヤモヤしてくる。


聞けば教えてくれるかもしれないけど......


彼からすれば「ただの客」な私がそんなこと聞いてもいいのかな。


私にとっては彼は特別だけど、彼にとっての私は「毎日来る変な客」くらいにしか思われていないだろう。


それでもいい。


私は彼が好きなんだから。


この気持ちに嘘はつきたくない。


でも、この気持ちは私だけの秘密。



< 8 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop