ホタルビ
「ええ~~!!何で私がお姉ちゃんの発表見ないといけないの?今日、私の楽しみにしてるドラマがあるのに。」
「そんなの録画でもなんでもすればいいじゃないの。お姉ちゃんが初の主役よ?折角だから一緒に見に行くわよ。」
2年前、お姉ちゃんが初めて主役に選ばれたという発表会に、お母さんに強引に連れて行かれた。
その時の私はバレエなんてまったく興味ゼロで、きちんと見るつもりはなかった。踊ってるだけで、一体何ができるんだろうって思ったりもしていた。
「はくちょうのみずうみ?何それ?」
ドラマが見れなくて、イライラした気分のまま会場に連れて行かれた私は、怒りを声に乗せつつ、お母さんに尋ねた。
「説明するより、実際見た方が早いと思うから、見てみなさい。ほら、開演のブザー鳴ったし、そろそろ始まるわよ。」
何それ?踊ってるのを見るのより、言葉で説明してもらった方がわかりやすいに決まってるじゃん。
文句はブザーに掻き消されて言えなかった。でも、あの時文句を言わなくて本当に良かったと思う。
だって、この数秒後に私は「目は口ほどに物を言う」ということわざの意味を知るのだから。