私は何を信じればいいですか?
くしゃっと私の頭を撫でる希尋が、同級生なのに大人びて見えた。
「俺は、教室行くけど。礼央はどうする?」
きっと希尋は、私よりもずっと成長しているんだ。
「………行く」
授業を、サボるつもりだったのに。
気付けば、口がそう動いていた。
教室に入れば、嫌でも希尋にバレる。
噂だって、耳に入る。
それが、すごく怖い。
だって、もう1人しかいないんだ。
私と、普通に接してくれる人は。
教室に近付くにつれ、心臓が大きな音を立てる。
ドクンッ、ドクンッ
「………希尋」
「何?」
「………何でもない」
希尋は軽蔑するかな。
私が蘭華の姫をイジメたって知ったら。
そしたらもう、関わってくれないかな。
…………寂しい、な。
「……ねぇ」
「うん?」
「さっきから、泣きそうな顔してる」
「………ッ!」
じわりと視界が揺れた。
ずっと溜めていた涙が、溢れそうになる。
でも、まだダメ。
私は、泣いてはいけない。
「そ、そうかな?じ、授業が嫌だからかなー?」
「ふーん?じゃあ俺とサボる?」
「はっ?」
泣きそうになるほど、嫌なんでしょ?
そう言って笑う希尋。
多分希尋は、私の嘘に気が付いて、そう言ってくれている。
私が、泣きたくないと思っていることにも。
「いいとこ、連れてけるけど?」
ぐらりと、心が大きく揺れる。
「いいとこって、どんなところ?」
「自然と、笑顔になれるとこ」