私は何を信じればいいですか?
「ふーん。懐かしい、ねえ」
「別に悪い意味じゃないけど」
「分かってる。……ただ、同じこと言ってる奴いるなって思ってね」
「へぇー」
そう言いながらも、もぐもぐもぐもぐ。
私のスプーンは、止まることを知らない。
だって美味しいんだもん。
「ふぉふぃふぉーふぁふぁふぇひぃふぁ(ごちそうさまでした)」
「…………飲み込んでから言えよ」
パンパンに膨らんだ私の頬を見て、隆都さんが呆れたように言う。
もきゅもきゅ、ごっくん。
「……ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。飲み物は?」
「コーヒー。ミルクと砂糖多めでね!」
こんな時間帯にコーヒー飲んだら寝れなくなるけど。
気にしない、気にしない。
それに割合はミルクの方が多いし。
「お待ちどうさま。………ミル…コーヒー……?……です」
迷わないでよ。
今ミルクって言おうとしたでしょ。
圧倒的にミルクの割合が多かったって、コーヒーって言えばコーヒーなんだから。
「これをコーヒーって言って頼める礼央を尊敬する」
「褒められてる気はしないけど、ありがとう」
「うん、褒めてねぇーよ?」
こんな言い合いでも、結構楽しい。
なんと言うか、悪意を感じない会話は、すごく気持ちが軽い。
なんて言ったら、重たいかもしれないけど。
「そういえば隆都さん。もう「おーい、隆都ー」
いきなり扉がガラリと開く。
ドアノブに掛かっていたクローズの看板が、ドアに当たってカタリと音を立てた。
「すみませんが、まだ開店前ですので」
「いや、もう開店時間過ぎてるだろ」
実に爽やかな笑顔で、入ってきた男の人は言う。
「もう11時過ぎてる、な?」
確かに、店の時計は11時を半分ほど過ぎた時間を指している。
「げ!?礼央の所為で開店時間過ぎたじゃねぇか!」