私は何を信じればいいですか?
______もしかしたら、この時すでに。
私は泣いていたのかもしれない。
暖かい手が、私の頬を包む。
「行くよ、礼央」
柔らかいけど、有無を言わせない口調。
彼の手は、ほんのり汗ばんでいて。
息も僅かに弾んでいて。
どうしてだか分からないけど、走ってきたのだとわかったから。
「ごめん……」
思わず口から出たのは、謝罪の言葉。
私の手を引いて歩き始めた希尋の背が、ピクリと止まる。
「ごめん……あり…がと…」
「別に」
それは、2度目の謝罪か。
吐息と混ざって掠れた、お礼の言葉に対する返答か。
希尋は私の方を見なかった。
それ以上何も言わず、手を引き続ける。
それが、希尋の優しさだった。
ごめん、ありがとう。
来てくれたのが、希尋で。
_________良かった。