私は何を信じればいいですか?
すぐ横をタバコの臭いが通る。
それと、柄の悪い声。
ぽふっと希尋の胸に顔が埋まった私。
ありがと、と顔を上げようとして。
…………む。
…………むむむ。
動かぬ。
そんな強い力で抑えられてるわけではないのに。
顔が上がらない。
あのー、希尋さん?
「泣くってさ」
突然希尋が言う。
「涙を流すことだけじゃないと思う。涙を流さなくたって、泣くことはできる」
静かな、希尋の声は。
すっと私の耳に入ってくる。
「礼央は、本当はずっと。泣いてたんじゃないの?」
「俺には、礼央はいつも。泣いてるようにみえた」
いつも、心の中で。
私は、一人ぼっち、うずくまって。
ボロボロと泣いてた。
でも、私は。
それに、気付かないふりをした。
必死に、見ないふりをした。
泣いてないって、思いたかった。
私には、泣く権利がないなんて言いながら。
ずっと、泣いてたんだ。
「なんで、分かっちゃうかな…………。
希尋には、嘘…………つけないね」