私は何を信じればいいですか?
私の前に立った広い背。
顔は見えない。
けれど、それだけで安心してしまった。
濡れた目を、こっそりと拭う。
蘭華の皆んなには見えないだろうし。
コイツには暴露てそうだけど。
「……誰だ、お前」
蓮の殺気にも表情を変えずに(見えてないけど多分そう)、逆にクスッと(見えないけど以下略)笑ってみせる。
「若宮希尋」
………あのー、希尋さん。
蘭華の皆んな、はあ?みたいな顔してますけど?
「……誰だ?」
蓮が篠に聞く。
それは、篠が情報担当だからなんだけど。
流石の篠も、全校生徒の顔と名前を覚えているわけではない。
思った通り、困った顔で。
「…………さあ?」
と、言った。
「お前、どこかの暴走族か?」
「…………まあ、ね」
面倒くさそうに、希尋が言う。
「なら、俺達に楯突いたらどうなるか、わかっt「全国No.3の暴走族・蘭華」
希尋は不敵に笑う。
「よく知ってるよ、総長さん」
殺気立つ蘭華の皆。
「てめぇ………」
ピン____と空気が張る。
「はいはい、そこまで」
一触即発の雰囲気を解いたのは、柔らかく甘い声。
制服に着いた、笹野宮学園の校章は赤だから、1年生。
ふわっとした茶髪を軽く跳ねさせて、タレ目の可愛い顔が、むぅと唇を尖らす。
「もう、何かってに喧嘩売っちゃてんの?駄目じゃん、希尋」
「うるさい、麻央(マオ)」
どうやら、この1年生は麻央と言うらしい。
「ここで僕が止めなかったら、絶対に麻耶(アヤサ)が煩くなってたよ」