私は何を信じればいいですか?
side希尋
どうして、思いは上手く伝わらないんだろう____
*
倒れた礼央を、ベットにそっと寝かせる。
額に張り付いた前髪を、パラパラと払ってやると、俺ベットに腰掛けた。
暫く礼央の寝顔を見つめていると、扉が開いた。
ひょこっと顔を出したのは、麻央だ。
「先輩の様子、どう?」
「寝てる。疲労だってさ」
「そっかー。大事なくて良かったね」
いつもの様に、ふにゃりと笑みを浮かべる麻央。
でも、普段よりその笑みは違う気がして。
「麻央。どうかした?」
「………ねぇ、今度は守れるかな?」
「麻央……」
「あの子みたいに、ならないかな」
目を細めて、泣き笑いにも似た表情を浮かべて、麻央は礼央を見つめる。
「先輩が倒れた時、あの子と重なって………。……どうしようかと思った」
麻央は手を伸ばす。
礼央にあと僅かで触れるというところで、手を引っ込めた。
「………なぁんてね」
先程までの、泣き笑いは影も無く、いつも通りのへにゃりとした笑みが浮かぶ。
俺は、べしっとその頭を叩いた。
「痛い!何すんの、希尋」
「別に」
_____誰にだって、言葉に出来ない想いはある。
でも、言葉にしなければ伝わらない。
それが、どうしようもなく、苦しいんだ。
side希尋end