私は何を信じればいいですか?
「あ、そう。……体調はもういいの」

不安そうに、希尋の瞳が揺れた……気がする。

「うん。大丈夫」

「……そ。麻央が心配してたから」

「うん?……うん、申し訳ないなぁ……心配かけちゃって」

うん、本当に申し訳ないんだけどさ。

何か引っかかる。

麻央君「が」心配してたんだよね。

麻央君「が」。

「動けそう?顔見せに行く?」

「行く。もう平気だし」

へらっと私は笑った。

身体は至って問題ない。

そう、私は元気なのだ。

希尋がずっと掴んでいた私の腕を引っ張った。

「わぁっ……と」

勢い良く立ち上がった私は、ポスっと希尋の腕の中で抱きとめられる。

うわ、希尋いい匂いする………じゃなくて。

「き、希尋さん?」

「………あんま心配、かけんなよ」




耳元で囁かれた声は、何だか切なくて、苦しそうで。

私は、ぎゅっと希尋を抱き締めた。


「ごめん」

「馬鹿」

「………ごめん」

ドキドキと鼓動がどんどん早くなる。

何か、頭の中もふわふわしてくる。

「き、希尋。もう離して………!」

顔が熱い。

きっと、私の顔は今真っ赤だ。



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