「離れるの禁止って、言ったよね……っ」



いつだか言った、“離れるな”の言葉。

あの日もきっと深くは考えないで言ってた。



今だって、なにも考えてない。

ただただ……、本音が零れただけだ。



今までのような愛想のない言葉じゃなくて、

感情の入った言葉。



言うまで気付かなかった。

オレがこんなにもコイツのことを、


見ていたなんて。想ってたなんて。




あの時と同じように抱き締めた身体は、

ピクリとも動かないままだった。




……わずかに感じたのは、手に零れたアイツの……涙だけ。 



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