「離れるの禁止って、言ったよね……っ」
***
「…今は、離れんな………っ」
なんとか間に合って彼女は今、オレの腕の中。
本人もよほどのことだったみたいで、ピクリともしない。
………あの車、信号無視か。
とりあえず、周りを安全かどうか確認する。
なんだかこの手を離すのが怖いと思ってしまうのは、さっきの光景を見たからなのか。
「…………ふぅ、行くよ」
今度は彼女の手を引いて歩道へと向かう。
人気の少なかった所為で、きっと大事にもならないだろう。