両片想い




「希美、ちょっと来て」



下からお母さんの呼ぶ声が聞こえてきて、重い体を起き上がらせた。


なによー。めんどくさいなぁ。




なんて口には出せず、こころの中でそう呟くと部屋を出て階段を下りた。




頭をポリポリかきながら階段を下りきると、目の前の玄関にお母さんと真っ白の頭のおばあちゃんが立っていた。



だ、誰…?




頭にクエスチョンマークを浮かべながら2人に近寄ると、そのおばあちゃんがにっこりと笑った。



「この子が、優子さんの娘さんかぁい」


おばあちゃんはガラガラのダミ声で、少し聞き取りにくい声。



優子さん…ってお母さんのことか。




お母さんはニコリと笑って頷いた。



「そうですよ〜。いつもダラダラして困ってるんですよ〜」



お母さん…余計なこと言わないでよ…



「私の若い頃もそうだったよぉ。
大きくなればなおるさぁ」



おばあちゃんは白い歯の間にある銀歯をギラギラさせながらそう言った。


シワシワの顔だけど優しい顔立ち。



なんだかすごく見てて、安心する。







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