両片想い





ピンポーン。


5月の学校が休みの日。


家のチャイムが鳴った。





「はいはーい」



お父さんとお母さんは仕事に行っていたから、私が代わりに出る。




お客さんなんて滅多に来ないから、ちょっと緊張。





ドアを開けると梅おばあちゃんが立っていた。



相変わらず真っ白の頭。



シワシワの優しい顔。





「希美ちゃん。
久しぶりやねぇ。
つくだ煮作ってきたからみんなで食べてなぁ。」




そう言って、梅おばあちゃんはタッパーを差し出した。




タッパーはくもっていて、水滴がついている。



あ、きっと出来たてだ。




「ありがとう。梅おばあちゃん」



笑顔でそれを受け取ると、梅おばあちゃんはニッコリ笑った。




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