【完】魅惑な藍の海の恋心色。
――「……おかあさん。」
あの日のこと、今でも覚えてる。
「藍……怪我、無い……っ?」
「うん。わたし、大丈夫だよ! だから、おかあさん、早く治ってね。」
道路へボールを拾いに行ったわたしに、大型トラックが向かって来た
大切な人を失った、あの日。
「もちろんよ……。茜と藍、二人を残して逝けないわ……。」
わたしを庇って轢かれたお母さんは、結局その日。
その言葉を最後に、還らぬ人となってしまった。
「おねえちゃん……おかあさんは? おかあさん、なんで顔に、白いハンカチ掛けてるの?」
まだ、〝死〟というものが分からなかったわたし。
わたしを庇ったから、お母さんは死んでしまったのに。
6歳になったばかりのわたしには、そのことについて、何一つ分からなかった。