【完】魅惑な藍の海の恋心色。
ゆっくりと体を起こせば、彼はわたしが落とした来客用紙とペンを使って
そこに何かを書いていた。
「……はい、オレの名前。これでいい?」
「う、うん……。」
「よかった。じゃあ、またね。〝小河せんせー〟。」
最後は耳元で、そう甘く呼ばれた。
咄嗟に耳を隠すようにするけど、もう遅い。
真っ赤になったわたしの耳を見て、彼はクスッと一度微笑んでから
軽やかな足取りで、保健室を出て行った。
取り残されたわたしの方は、未だに残ったままの唇の感触と耳の熱に……
心臓がずっと、鳴りっぱなしだった。
「わたし……キス、しちゃった……。」
用紙に残った、彼の名前。
〝3年A組 三木海人〟
その文字にさえ、ドキドキが止まらない……。
「ど、どうしよう……っ!!」
小河藍
波乱の予感