【完】魅惑な藍の海の恋心色。
慌てて駆け寄る。
あんなに高いところから落ちたというのに、
不思議と体は、全然痛みを感じなかった。
「っ、どうして三木くんまで飛び下りたの!?」
着物の裾をちぎって、近くに落ちてあった木の板を添え木として
一緒にギュッと、強く足を縛る。
借り物だけど、着物だから普通の服よりも裾が長くて、とりあえずは困らなかった。
初めて、このお化け役をやってよかったと思う。
「いや、どうしてって……。……先生が、危ないと思ったら無意識に……。」
「っ!! ……ばか! 三木くんの、バカバカバカ!」
わたしは両の手の平を強く握り、その手を三木くんへと何度も振り下ろす。
もし、わたしを助けたのが原因で、
三木くんが意識不明の重体になっていたら、わたしはどうすればいいの……?
死んでしまったら、わたしは……。
学校からの退職処分が怖いわけじゃない。
三木くんのいない日常を想像することが、怖いんだ。