【完】魅惑な藍の海の恋心色。
わたしはどうなってもいい。
だけどもし、三木くんの将来に影響を与えてしまったら……。
「……そんな顔、せんとってください。」
無意識に顔を歪めてしまっていたのか、緒花さんはそう言う。
「辛い恋、苦しい恋、暖かい恋、甘い恋、たくさんありんす。でもその気持ち全部含めて、恋でありんす。」
「…………?」
着付けが終わり、緒花さんは大きな全身鏡を見せてくれた。
「悲しいだけの恋なんて、ありやしません。諦めず頑張れば、いつかは幸せな恋に辿り着けやす。」
諦めず頑張れば、幸せな恋……
本当に……?
口には出していないのに、わたしの気持ちを察した緒花さんは、優しい笑顔で頷く。
「私ら御神楽着付け屋は、恋する乙女の味方でありんす。」