【完】魅惑な藍の海の恋心色。
〝早紀〟と呼んだ声は、間違いなく三木くんの声だった。
涙が滲む目を覆って、モヤモヤと霧の掛かった頭で
必死に別のことを考えた。
だけどどんなに別のことを考えても。
頭に浮かぶのは、カーテン越しに行われていた2人の行為。
耳につく、三木くんが女の子に重ねていた甘い唇同士の音。
……何だか、悔しかった。
ああやって、三木くんが甘く触れるのは、心の底のどこかで……。
わたしだけだと、思ってたから。
……その上、その日の放課後。
「海人〜キスしよ?」
彼は、昼間とは違う声の女の子と正門前で、キスを交わしていた。
今日の放課後
保健室に来なかったのは、あの子と約束があったからなんだ……とか、考えて。
三木くんに見つからないよう、慌てて裏口から帰った。