【完】魅惑な藍の海の恋心色。
恋はそれなりに、たくさんした方だと思う。
……だけど
今思えばどれも薄く浅い恋で、恋と呼べるほどの想いでもなかった。
「わたし、三木くんが好きなのかなぁ……?」
こんなにも、モヤモヤするのは初めて。
こんなにも、恋で頭がいっぱいになるのも……。
「はじめてで、わかんないよ……。」
三木くんが、はじめて……。
「うぅぅ〜〜……。」
「…………。」
わたしが変な唸り声を上げる隣で、里佳子ちゃんは最後のようかんを食べ終えた。
「藍。」
「んう……?」
「ごちそうさま。」と言って、立ち上がった里佳子ちゃんは帰るつもりなのか。
ハンガーに掛けておいた上着を着始める。
本当は引き止めたいけど……。
里佳子ちゃんの仕事がどれだけ大変なことなのか、わたしは充分に知ってるから。