片道切符。
ふうっと小さな溜め息をもらしてから、俺は彼女に従って座る。
すると彼女は、頬杖ついて、俺を見据え
「拗ねた?」
と、小さく意地悪な笑みを浮かべる。
「なんで。」
「せっかく来てくれたのに、帰っちゃうから。」
「勉強の邪魔になると思ったから」
「どうして?」
「どうしてって…」
…わかるだろ、それくらい。
俺がお前の負担にならないか、気にかけてることくらい。
俺がいることで、お前の受験に影響しないか、小さな脳で必死に考えてんだよ。
お前と違って俺はバカだから、大学受験とか無関係だし、全然わかんねーし…
だから、お前の邪魔にだけはなりたくないんだよ。
俺の考えてることくらい、わかってんだろ。
もう1年半近く付き合ってるんだ。
お互いが何を考えて行動してるかくらい、わかるだろ。
黙り込む俺に、彼女がすっと手を伸ばしてきた。
彼女のあたたかい手のひらが、俺の頬にそっと触れる。
「おかえり。寒かったでしょう?」
ふふっと微笑む彼女。
リスニングやってたとかいうの、嘘なんじゃねえの?