片道切符。
桜が、舞う
「成嶋(なるしま)。」
名前を呼ばれ、いったい俺に何の用だと、作業中の仕事から顔をあげると、現場監督の三木さんが神妙な面持ちで俺を見据えていた。
「……はい!」
咄嗟に返事しなかったのは不味かったかなと、苦笑いを浮かべてみても、三木さんの表情は変わらない。
三木さんは強面のおじさんで、昭和のヤンキーみたいに礼儀に厳しい。
あ、昭和のヤンキーって自称したのは三木さんだ。
俺がまだ新入りで生意気だった頃、『平成のチンピラが』って文句を言われたときに。
「休憩だ。そこ、他のやつに代わってもらえ」
「あ、はい!」
なんだ、休憩かよ。変に身構えるんじゃなかった。
三木さんの姿を見送って、ふうっとため息をついてから、近くの先輩に作業を代わってもらった。
高校を卒業してすぐに就職した俺は、地元の建設会社に勤めて4年目になる。
仕事にも慣れたし、後輩も数人できて、最近はぼんやりと思うことある。
俺は、何のために仕事をしているんだろうかって。