片道切符。


ごまかすようにグラスをあおると、少し考えるようにしてから

佐倉さんが唐突に、「カリナちゃん」と言った。


「ぐっ…!ちょ、…は?」

むせて動揺を隠せない俺を見て、佐倉さんはくすっと笑った。

「去年の夏前くらいまでだっけ?」

「…なんでそれを知ってるんですか。」

淡々とした口調で問えば、佐倉さんは面白そうに笑いながらある後輩の名前を挙げた。


「…なんでアイツも知ってるわけ。」

俺は佐倉さんどころか、仕事場で恋愛の話をしたことがない。

だから後輩に話したこともないはずなんだけど…

「出身中学が一緒で、それで知ってたらしいけど?」

…なるほどな。カリナとアイツは同じ地元か。

それにカリナには弟がいたような。そこの繋がりか…。


「成人式で再会して、それで盛り上がっちゃったんだろ?」

「盛り上がったって…変な言い方しないでくださいよ」

「だってそうだろ? あ、でも昔付き合ってたわけじゃないのか?」

「ただの、同じ高校の同級生ですよ」

カリナは高校時代から、派手な女子だった。

顔も広いし、だから知ってた。

だけど、高校時代に取り分け仲が良かったわけでもない。

< 23 / 64 >

この作品をシェア

pagetop