片道切符。
ごまかすようにグラスをあおると、少し考えるようにしてから
佐倉さんが唐突に、「カリナちゃん」と言った。
「ぐっ…!ちょ、…は?」
むせて動揺を隠せない俺を見て、佐倉さんはくすっと笑った。
「去年の夏前くらいまでだっけ?」
「…なんでそれを知ってるんですか。」
淡々とした口調で問えば、佐倉さんは面白そうに笑いながらある後輩の名前を挙げた。
「…なんでアイツも知ってるわけ。」
俺は佐倉さんどころか、仕事場で恋愛の話をしたことがない。
だから後輩に話したこともないはずなんだけど…
「出身中学が一緒で、それで知ってたらしいけど?」
…なるほどな。カリナとアイツは同じ地元か。
それにカリナには弟がいたような。そこの繋がりか…。
「成人式で再会して、それで盛り上がっちゃったんだろ?」
「盛り上がったって…変な言い方しないでくださいよ」
「だってそうだろ? あ、でも昔付き合ってたわけじゃないのか?」
「ただの、同じ高校の同級生ですよ」
カリナは高校時代から、派手な女子だった。
顔も広いし、だから知ってた。
だけど、高校時代に取り分け仲が良かったわけでもない。