片道切符。


「ないですね。」

食い気味で返事をした俺に佐倉さんが苦笑した。


「…カリナの友達は、みんなカリナみたいな感じですよ」

「あーなるほど。わかった。」

派手なオンナのまわりはみんな派手だ。

カリナと付き合っといてなんだけど、派手なオンナは好きじゃない。

じゃあなんで付き合ったんだと問われれば、

あのときは、誰でもよかったんだとしか、弁解のしようがない。

手ごろに付き合えるのが、軽いオンナだっただけ。


「でも喜べ成嶋くん。そんな君に朗報だ。」

「…なにキャラですか、佐倉さん」

酔っ払ってるんじゃないかと、佐倉さんの顔色を伺うが、

そんなに酔ってる風じゃないし、わりと真面目に言ってるのかも。


「来月、事務にバイトの女の子が入るらしい」

「…へえ。そうなんですか。」

なるほど、佐倉さんの今日の目的はこれかと思った。

誰から仕入れた情報か、…まあ事務のおばちゃんから聞いたのだろう。

家庭を持つパパな佐倉さんは、おばちゃんから息子のように好かれているからな。


「がんばれよ。」

「まだどんな子かもわからないのに、ですか?」

「顔知らなくても後輩たちはもう盛り上がってるぞ。

現役大学生らしい。それだけで十分だろ。出遅れるなよ」

「…バカなんじゃないですか。その子、彼氏いるかもしれないですよ?」

でもそれだけ、この業種には出会いがないってことか。

「略奪愛って余計に燃えない? 俺が思うにうちの若手のなかじゃ

お前が断トツにイケメンだからな。お前ならできると信じてる。」

「はあ…、その言葉だけありがたく受け取って置きますよ」

略奪愛だなんて…そこまでしてオンナが欲しいのかよ、と思った。

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