片道切符。
「成嶋って、女子高に彼女いたよな?」
「え…、ああ、うん。」
…思い出さなくてもいいことを、思い出してくれたな。
地元のやつで中、高と俺と同じだったやつはいなかったから、
そのことを知ってるやつなんていないと思ってたけど
どうやらいつのときだか酔っ払った俺が少し話したらしいな。
そのことを知らなかったやつらも、「へえ」だなんて、興味を示している。
…それもそうか。
おしとやかだとか麗しいとか、そんな女子からは欠片も無縁な俺たちだもんな。
”女子高”っていう言葉の響きに、少なからず夢見るような憧れがある。
「…昔の話だよ」と俺は苦笑いした。
そのまま受け流してくれればいいものを、「行ってみようぜ」だなんて提案するバカがいる。
誰かしらは言うんじゃないかと思ったけれど、…やっぱり言ったな。
しかもそれにみんな賛同する当たり、俺らの民度が知れたってもんだ。
「彼氏かなんかわかんないけど男もいたし、
それに普通に食べに来てる客もいたから大丈夫だろ!」
…ほんとに行くのかよ。
「一般客もいるなら、俺たちも入れるさ。」
「よっしゃ、行こう!早めの二次会だ!」
ほろ酔い気分でいい感じになったバカ男5人は
慣れてもいないイタリアンレストランへと足を向かわせた。