片道切符。
少しの沈黙を置いてから、「…オンナ、作れよ。」と、いつもの言葉を佐倉さんが吐いた。
「ははっ、今はまだ、全部自分だけで生活を回していくのに必死で、
全然それどころじゃないですよ…」
ちょっと失礼します、と俺はトイレに立った。
一人暮らしは、想像以上に大変なことが多かったりする。
家事なんて全然したことなかったから、
一人暮らし初日に買ってきたベーコンを切って指から血を出した。
洗濯だって、干し方が下手なのか、渇くといつもしわくちゃだ。
日々、母の偉大さを痛感する毎日だ。
用を足して、一服しようかと出口に向かうと
なにやら後輩たちが、二次会へ繰り出そうとしているようだった。
俺もそろそろ佐倉さんと一緒に抜けるかな、なんて思いながら
宴会場へ踵を返そうとして、ひとり、後輩らの足元で蹲るやつを見つける。
されるがままに飲まされて、これからまた付き合わされそうになっているんだろう。
…はあ、ほんと、なにしてんだよ。
「具合悪そうだから、帰してやれよ」
盛り上がる後輩たちにわざと冷たく言葉を放った。
俺の声が耳に届いたのか、彼女が赤い顔を俺に向けた。
涙目になってるし、どんだけ飲まされたんだよ。