片道切符。
俺が一人勝ちしようとしてるとでも思って気分を害したのか、
後輩たちが露骨に嫌そうな顔をするから、俺は彼女に
「タクシー捕まえてやるから、乗って帰れ」と一万円を握らせ、
店先で捕まえたタクシーに彼女を乗せて、それを見送った。
俺がいいところを持ち帰りする気なわけじゃないと感じ取ったのか、
後輩たちはいつの間にか二次会へと行ったようだ。
宴会場に戻るのもなんだか面倒になって、俺はそのまま店を出た。
佐倉さんに電話をすれば、「ふざけんなよ、なに勝手に帰ってんだよ」と怒られた。
どうやら今日は本気で俺の家に泊まりにくるつもりだったらしい。
そんなのごめんだ。
佐倉さんが泊まりに来たならば、散々散らかすだけ散らかして帰るに決まってる。
遠くに花火の上がる音を聞きながら、俺は駅に向かって歩いた。
まだまだ花火も序盤だし、電車に乗る人は少ないだろう。
高校時代は毎日これを使ってたんだよなって思うと、随分昔のことのように感じた。
ホームへ続く階段を降りながら、懐かしい気持ちになった。
感傷的な気持ちになってしまうのも、仕方あるまい。
酒入ってるし、それに、ついさきほどまで…彼女が近くにいたんだ。