片道切符。
佐倉さんには家庭があって、子供さんが3人いる。
一番上の娘さんは、今年から小学2年生になるらしい。
佐倉さんは高校卒業すると、次の夏には結婚して、家庭を持ったらしい。
まだまだ若いけれど、しっかりしたパパだ。
…最近の俺のもやもやした思いのわけは、佐倉さんが関係してたりする。
「お前もすっかり、煙草と缶コーヒーが似合うようになったな」
無糖の缶コーヒーを啜りながら、佐倉さんは言う。
「それ、俺のことを馬鹿にしてますよね?」
「あ? してない、してない。」
そう言いながらも、無精髭の生えた口元をにやりとゆがめる。
「…してるじゃないですか。」
俺は自分の手に持つ微糖の缶コーヒーを握りしめた。
まだ、無糖のコーヒーは苦手だ。
ドリップならまだしも、缶コーヒーの無糖は口に広がる苦味にまだ抵抗がある。
それに、煙草片手に飲む缶コーヒーは、少し甘いほうが俺の好みだ。
前にその旨を佐倉さんに伝えると、『それをガキって言うんだよ』と馬鹿にされた。