片道切符。
それでも俺には…少しの理性が働いていたし、
そこまでひどくしてねーだろと思いながら、彼女の頭をそっと撫でた。
「…悪かったな。」
「まひ…ろ…?」
…彼女の俺の名前を呼ぶ声は、心臓に悪い。
心がおかしな音を立てて軋むんだ。
冷蔵庫からペットボトルに入った水を持ってくると、
タオルケットから頭を出した彼女がいた。
…なんだよ、やっぱり泣いたのかよ。
赤く潤む彼女の瞳に、少しの罪悪感を抱きながら、
ベッドを背もたれにするようにして、彼女のそばに座り込んだ。
「ちょーだい。」
「ん?」
「お水。」
俺が口つけたあとの水を飲む彼女も、平気で渡してしまう俺も、
甘いんだよな。二人の関係が、はっきりとしない。
「…っめた!なにすんだよ!」
「ふふふっ」
ふいに背中にぴとりと当てられた冷たさに、思わず飛び上がる。
振り返れば、ペットボトルを手にした彼女が笑っていた。
彼女の笑顔を見て、心の奥で、何かがじわりと疼いた。
「…ごめん。」
「……まひろ?」
「ひどくして、ごめん。」