片道切符。
「そうか…。よかったな。」
「……え?」
「夢だったじゃん。外国と関わりのある仕事がしたいって。叶ったんだな。」
「……うん。」
「すごいな。夢に向かって努力して、叶えるなんて。」
「そうかな…?」
「そうだよ。俺なんか、情けなくなるよ。」
「…まひろは?」
「ん?」
「まひろの、夢は…?」
俺の夢は、もう叶わない。
今となっては、本当に夢になった。
「俺に…夢なんてあったかな?」
俺の口から、はははっという軽い笑いが漏れた。
「俺は、普通に生活していくことしか考えてなかったな。」
普通の生活…。
必死に仕事して帰ったら、温かく俺を迎えてくれる家族があって…
っていう、ありきたりな普通の家庭。生活。
ちっぽけなことのように聞こえるかもしれないけど、
それが、学生時代の俺が密かに胸に抱いていた夢。
「いまのまひろの夢、とかは?」
「いまの俺?」
「そう、これからの将来、こんなことがしたいって夢は…?」