片道切符。
心が、重なる
お盆休みが明けてから、俺は彼女との距離を置いていた。
というか、事務はお盆の間にたまっていた書類の処理に追われてるようだったし、
いつの間にか、彼女がバイトとして働きに来てくれるのも、あと1週間とちょっとになった。
学生の彼女持ちな後輩に聞いてみれば、大学生の夏休みは9月後半までらしい。
残りの夏休みの間、彼女が何をするのか知らないけど、所詮、俺には全く関わりのないことだ。
後輩は、就職先のインターンとかあるんじゃないかと言っていた。
どうであれ、彼女は彼女の道を確実に進んで行ってるし、俺はそれを送り出した。
過去になんて、すがってちゃだめなんだ。
…あの夜のことは、ほんの少し、過去を懐かしんだだけ、懐かしくなっただけだ。
「じゃあ、どうしてこんなとこでバイトしてんの?」
「………はい?」
「だから、別にうちじゃなくてもよかったじゃん」
昼休み、現場近くの定食屋で、俺がカツ丼にがっついていると、
焼き魚をつまむ手を止めて、佐倉さんが突拍子もない話題を切り出した。
「ちょ、……主語を言ってください。」
「あ、つぐみん」
「つぐみん…?」
俺がじとっとした目で佐倉さんを見つめると、「愛実ちゃーん」とへらっと佐倉さんは笑う。