片道切符。
また、この人は…。
どこから情報を仕入れてくるのだろうか。
もしかすると、佐倉さんは千里眼でも持っているのかもしれない。
どうしてこんなにも、俺の情報をすぐ仕入れるのか。
それに今回は…俺は、誰にも言っていないはずだ。
俺と彼女とのことを知ってるやつなんか、いないはずだ。
「お前にも、甘酸っぱい青春時代ってのがあったんだな」
「…は?」
「放課後にさ、自転車2人乗りして帰るとか…俺もやってみたかったなー」
…どうしてだ。
佐倉さんは、俺たちの高校時代の話を知っている様子だ。
「…なんのことですか?」
しらばっくれてはみたけれど、佐倉さんは目を細めて俺を見る。
その目線だけで、俺に嘘なんかつけないぜと言ってきている。
「…佐倉さんも、ニケツくらいしたでしょう」
「それがな!してねーんだよ。彼女の家、学校のすぐ隣でさ!」
悔しがるように話してから、「そうじゃなくてさ」と佐倉さんは話を戻す。
…戻さなくたっていいのに、むしろそのまま別の話題に流れればよかったのに。
「つーぐみん♪」
その言い方、やめてくださいよと、そんな意味も込めて佐倉さんを軽く睨む。