片道切符。
「つぐみんは、成嶋のなーに?」
小首をかしげて聞いてくる。
「…何って、……昔の、……昔、少し仲良くしてただけですよ。」
わざと”元カノ”という単語を出さなかった。
どうせ佐倉さんはそんなことくらい知っているだろうし、それに…
彼女のことを”元カノ”と呼ぶことに、どこかで抵抗する自分がいたから。
なんでだよ、…どうして抵抗なんかしたがるんだ。
よくわからない自分の気持ちにむしゃくしゃして、俺はコップに入っていた水を一気に身体に流し込んだ。
「そーうカッカするなって。愛実ちゃんから話してきたんだぜ?」
俺が自分自身にイラついていたのを、佐倉さんは佐倉さんの言ったことに対して
イラついたのだと思ったのだろうか、そんなことを言う。
って、俺が気になったのはそんなことじゃなくて…
「……愛実が?」
「そう。なに、君たち、ケンカでもしたわけ?」
「は……」
「それとも、お前がフッたの?愛実ちゃんのこと。ヨリ戻してあげなかったの?」
佐倉さんの思いがけない発言に、俺は少しの間、思考が止まった。
「……なんのことですか?意味がわかりません。」
夢物語にしても、ばかげてる。
俺が見た夢にしてもだ。そんなこと、あるわけないだろう。