片道切符。
「他人の趣向にどうこう言わねーよ」
「いつも言ってるじゃないですか」
「そうか?」
あははとあからさまな笑い声をあげた佐倉さん。
「で、お前、オンナは?出来たのか?」
「…はあ、ほらまた、どうこう言ってるじゃないですか。」
「別にいいだろーが、このくらい」
「出来てませんよ。」
「あぁん?」
「だから、出来てませんって。」
「はやくオンナ作れよ」
「そりゃ、欲しいですけどね。カノジョ。」
「つくれよ、お前の大切な存在。」
「……はい」
家庭を持つ佐倉さんには、守らなければいけない大切な存在がある。
そのために、日々必死に仕事をして、働いている。
本当は高校卒業後、専門学校に進学する予定だったという話も聞いたことがある。
けれど彼は、新しく生まれくる命のために、職に就くことを決めたそうだ。
それに比べて俺は、守るものなどないし、未だに実家暮らしだし…
だから、考えてしまうことがある。
俺は何のために働いて、生きているのだろうかと。