片道切符。
「俺は頭が悪くて、こうして身体を動かす仕事しかできないし、
それに比べて、彼女は素敵な考えを思っていて、すっごくかしこいんです。
こんな田舎になんかいるよりも、もっと、もっと大きな世界で活躍すべき人なんですよ。」
「…お前が出て行くとかいう考えはないわけ?」
「え?」
「お前が彼女のために英語学んで、一緒についていくとかいう考えはできないのか?」
「それは…無理ですよ。スタートラインが違いすぎますよ。
俺がどうにかして英語話せるようになってる頃には、彼女はもっと先に行っています。」
俺が足を引っ張るわけにはいかなくて。
でも、彼女はどんどん前に進んでいくべきなんだ。
「お前の考え、よくわかんねえ。」
「俺も、自分で言っててよくわかんないです。」
「俺も頭悪いからな。」
「住む世界が違うんですよ、彼女たちと俺たちは。」
住む世界が違う…自分で言ったくせに、
その言葉に傷つく自分がいる。
「つまりさ、お前は、自分に自信がないんだろ?」
見透かすような視線を投げかける佐倉さんを、俺は黙って見つめた。
「自分に自信がないから、はじめから諦めてるんだろうが。」
心にずさっと、ナイフが刺さったようだった。
…その通りだ、佐倉さんの言う通りだ。
俺には、自信がないんだ。彼女と一緒に歩んでいく、自信がない。