片道切符。
「愛実ちゃんを守れる自信がないから、いつまでもそうやって足踏みしてんだろ」
こんな俺には、彼女のことを守ることなんかできない。
どうやったら守れるかもわからないんだ。
「だけどよ、頭ん中でごちゃごちゃ考えるより先に、行動しろよ…!」
佐倉さんの瞳の奥に、凛としたなにかが見えた。
「まず動いて、どうにかしようともがいてみろよ!やってみてだめだったら、また違う方法を試せばいいだろ!」
18歳で家庭を守ることに決めた佐倉さんの言葉には、重みがあった。
まだ若いながらにして、十分な覚悟があったことがわかる。
「逃げんなよ。誰かを守る前に、己に負けてるようじゃ、情けなさすぎんだろ。」
……情けない。
自分に自信が持てなくて、彼女を守れる力が自分のどこにあるとも思えなくて、
行動するより先にすべてを諦めてしまっている俺は、とても情けない男だ。
「でも、今の愛実に…俺の気持ちを伝えたところで、どうしようもないじゃないですか。」
俺がいくら彼女を守りたいと思っても、彼女は次のステージへ向かっている。
…遅すぎる。
あの日、旅立つ彼女を見送ったあの日から、俺たちの進む道は分かれた。
今さら、後戻りなどできない、別々の道を歩み始めたんだ。
「俺は彼女の夢を応援してあげたくて、壊したくなんかないんですよ。足手まといになんて、それこそ彼女にとったら、みっともないじゃないですか」
「みっともないとか、それを決めるのはお前じゃなくて、愛実ちゃんだろ。それに、お前次第で、お前がどう変わるかで、愛実ちゃんに相応しいお前になれんじゃねぇのかよ」
彼女のために、自分を変える…か。
そんなこと、俺には全然考えられなかった。
鼻から、俺と彼女は違うんだって、決めつけていたんだ。