片道切符。
「俺…お前のこと、ずっと好きだった」
ぴくっと、愛実の肩が揺れる。
「今でも、ずっと、…好きだ」
勢いで飛び出してきたけれど、俺の想いを伝えるって、こんなにも呆気ないもんなんだな。
想いを言葉にしたが、なんだかおかしな感じだ。
あの日、送り出したはずの背中を追いかけて、こうして今さら……愛実に“好きだ”と言って、すがりつきたくて仕方ない。
俺を置いて、どっか行くなよ。
情けないことを思っていると、自分でも笑えてくる。
俺は、彼女の夢すら真っ直ぐに応援してやれなくて、自分のエゴのために、こうして今さらな自分のひどく情けない想いを彼女にぶつけている。
佐倉さんごめん…なんだか、俺、間違っているのかなって、そんな気がして来たよ。
たくさん背中を押してもらったのに、結局、俺は情けなくて、みっともない男らしい。
ここに来て、彼女の小さな背中を見て、やっぱり、俺が着いて行ける背中じゃないなって、弱気な俺が自分の気持ちを制御しようとするんだ。
愛実には、愛実の未来がある。
俺には、俺の未来が。
それぞれの道を信じたあの日、俺たちの道は分岐したはずだった。
だけど、俺は……自分の道を歩きながら、焦がれる想いを断ち切れずに、戻ってなんか来やしないのに……、自分の歩く道を振り返りながら、進んでは立ち止まって…分岐点から一向に先に進めていない。
………お前のそばに、いたいんだよ。
「ごめん、忘れて。」
反応のない愛実の背中に、自嘲気味な笑みを混ぜて告げる。
「聞かなかったことにして。…就職、応援してるから。」