片道切符。


階段を1段飛ばしに降りて行くと、後半はスピードに負けてよろけそうになる。

ほっほっと、リズム良く降りていたのが、崩れる。


やべえ、転びそう。でもこのままスピードに身を任せて走っていけば…!

足首を痛めるリスクはあるかもしれないけれど、電車を30分待ちぼうけしないで済む。


たった十数段の階段を駆け降りながら、よくそんなことを考える暇があったな、と思う。

あとになって思い返せば、云々と頭の中で考え事をしてないで、前を見ろ、俺。



「ん?!…うっわぁ!!!」

気づいたときには、間に合わないと思った。

電車に?いや、それには間に合った。


だけど無視できない事態が生じてしまったもんだから、電車は警告音を鳴らして走り去って行った。


「ごめんッ!大丈夫???」

スピードに身を任せて階段を降りた俺は、前方不注意で人に思いっきりぶつかってしまった。

しかも、ぶつかった相手は制服着てる女子学生だし、

こんながたいのいい男にうしろからタックルされたら、転ぶのも当たり前だろう。

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