公園であいましょう
(1)
 カサ カサ と落ち葉をふんで、誰もいないベンチに
 そっと腰をおろす。

 ホォーとため息とともに、肩の力をぬいて、私は背もたれに
 体をあずける。

 突風が吹き抜けていき、落ち葉が音をたててころがっていった。
 
 風はつめたいけど、かわいた冬の日差しが、
 木の枝のあいだからおちてくる。


  
 平日の昼間、だれもいない小さな公園。
 ここが私のオアシス。
 仕事と仕事の合間にここでほんの少しの時間
 ベンチに座るのが、今の私の一番のお気に入り。

     

   でも、今日はそこに、先客がいた。

 

 ジーンズにつつまれた長い足を無造作になげだして、
 背中を丸めて座っている男の人。
 うつむいているせいで、顔はみえない。

 公園の入り口に立ったときに、私のいつもの場所は、
 もう、他の人でふさがっているのがわかったのだから、
 すぐに回れ右をして帰ればよかったのだ。

 

 それなのに私は、反対に、一歩、一歩、ベンチに近づいていった。

 

 気がつくと、ベンチの真ん前に立って、
 私はそこに座る人を見下ろしていた。
 でも、その人はぴくりとも動かない。
 腰をかがめて、そっと顔をのぞきこんでみる。

 「なんだ、、、眠ってる。」

 



 
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