公園であいましょう
「自分の家にいそいそ通って来る郁ちゃんに手を出さなかったのは、
王子のやさしさよ。
鈍くてお固い郁ちゃんに、ずいぶん我慢させられたんだと思う。」
「そうなんでしょうか。」
「体の関係だけが愛情だと言ってるわけじゃないのよ。
でもね、こう愛しさがあふれたら、
自然と相手に触れたい、、、って思うもんよ。」
「はい。」
「いつも自分をドキドキさせて、幸せな気持ちにさせてくれる王子に
郁ちゃんはいったい何をかえせているの。」
「さ、さっぱりなにも、、。」
「でしょ!王子に私の初めてをもらって下さいぐらい、言ってごらん。」
「へっ!?そんな、とてもそんなことは、、、。」
いったんさめていた頬に、また熱があつまっていく。
「そんなこと言って、もたもたしているうちに人生なんて
終わってしまうものよ。」
「いや、それはちょっと、オーバーな。」
「そういうもんなの!!」
「は、はい。」
まっ赤になった私をみて田辺さんはニッコリと笑う。
「自分を大切にすることは大事。
でも、愛って目に見えないでしょ、
だから、なにかのカタチにしていかなきゃ。」
田辺さんのありがたいお説教は延々と続き、
寝不足で出勤した公民館の職員玄関で
私は、田辺さんにとんでもないことを聞かされた。